海を見たい・・
・・そんな時がある。
体の震えが止まらないほどの恋を
知ったわけでもなく、
この世の終焉のような大失恋を
経験したわけでもない。
若い時ならまだしも、
およそ、海など似合わない年になった
初老の私がだ、
なぜだろう?
この地に住む私にとって
海はごくごく身近なものだ。
都会人や恋人たちが憧れるような
海沿いのドライブも特別なことじゃない。
でもやっぱり‘’海‘’を見に行く。
およそ起こりもしないことや
どうでもいいことに対して
何故だか心がざわつくとき、
漠とした不安や虚しさに襲われたとき、
目の前に大きく広がる海の青は
平穏と冷静さを取り戻してくれ、
規則的に寄せては返す波は、
窮屈な胸を開放させる。
潮騒は母親の胎内で聞いていた音に
似ているという。
つまり、海に行くということは
胎内回帰といえる。
背中をそっとさすってくれる母親に
逢いにいくことなのかもしれない。
すべて大したことではない、
何とかなる、
母なる海は
人のちっぽけさを教えて、
「そろそろ帰りなさい」という。
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