11年前、県選手権に出場した時の話。
私はインスタートの10組に組み込まれました。
4人とも、所属倶楽部も違いますし、
皆、初対面でした。
《この人、どんなゴルフをするんだろう?》って
皆それぞれ、思っているに違いありません。
「最近、調子わるくて!」
「お手柔らかに!」
「ご迷惑掛けますけど!」
「飛ばされるんでしょうね!」
「上手そうな人ばっかりで、場違いなトコ来ちゃったな!」
謙虚さを装いながら、それとなく、探りを入れてる感じですね。
言い訳もとりあえず、早めにしときます。
いろんな思いを胸に秘めて、
さあ、スタートです・・
驚きました!!
あんなに落ちてこない球を初めて見ました。
私の組に本当にいたんです、正真正銘の飛ばし屋が!
ドライバーの飛距離は、
私より40~50ヤードはいってたでしょう。
こんなに置いてかれた経験は初めてでした。
圧巻は、210ヤードのショートホールでした。
私は、5番ウッドでまずまずの当たりだったけどショート、
その飛ばし屋は、なんと6番アイアンでグリーンオンさせたのです。
私のこれまでのちっぽけな自信も、完全に吹っ飛びました。
彼は、30代後半、細身、長身で、高校まで野球やってたそうです。
「飛ばしますねー」と私、
「いやいや、飛んでもスコアがねー」と彼。
「そんなことないでしょ、それだけ飛んだら楽でしょ?」
「イヤ、イヤ」
彼が‘’ニヤッ‘’と笑いました。
私は、その時、負けられないと思いました。
飛距離じゃないですよ、スコアでです。
《ヘッドスピードが速いから、その分スピン量もすごいはず、
曲がるときは半端ないだろう。》
《他の人よりずいぶん前に飛ばしたぶん、それだけ、グリーンには
絶対乗せなきゃと、プレッシャーがかかるはず。》
それからは、彼のショットを見ないようにしました。
逆に、あれだけの飛距離の差が、良かったのかもしれません。
どれだけ振っても、追いつけないんですから、
あきらめもつきました。
それからは、ひたすら曲げないゴルフに徹しました・・
その後、彼は、3回のOBを打ち、トータルスコアは85、
私は84.
飛ぶってことは、アドバンテージだけど、
常に危険もはらんでいるということ。飛ばなくたって
勝負できることも実感できました。
何か、少し、理由のつかない寂しさを
感じたけれど。
その日から、私のゴルフは変わりました。
自分は飛ばせるゴルファーではないんだ、
それなら、アイアンの正確さとアプローチで
勝負できるゴルファーになろうと。
4年後、その飛ばし屋の彼は、県選手権で初優勝を
飾りました。
今はもう、私の追いつけないとこまでいってしまったけれど、
あの日勝ったのは、確かに、この私でした。
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